2か月ほど前のこと。近くのセブンイレブンの雑誌コーナーに「日本刀の本」というムックが並んでいました。パラパラとめくると、そこになつかしい刀が・・・天下五剣の中でも特に美しいとされる平安時代の名刀「三日月宗近」の写真がありました。
三日月宗近は、京都三条に住んでいた「三条小鍛冶」または「三条宗近」と呼ばれた名工の刀で、国宝に指定されています。足利将軍家の秘蔵の名刀として継承され、松永久秀と三好三人衆が二条御所を襲撃した「永禄の変」では、将軍足利義輝はこの三日月宗近を振るって奮戦したと伝えられています。足利義輝は塚原卜伝の直弟子で、後に「剣豪将軍」と呼ばれるほどの剣の達人でした。襲撃された時は、伝来の名刀数本を畳に刺し、斬れなくなると刀を替えながら戦ったといわれています。その時の一振りがこの三日月宗近です。
残念ながら多勢に無勢で義輝は討ち取られてしまい、変の後に三日月宗近は三好政康の手に渡りました。政康から豊臣秀吉に献上された後、秀吉の正室高台院が所持。その後遺品として徳川秀忠に贈られ、以来徳川将軍家の所蔵となっていました。天下人の持つ名刀中の名刀として、最も有名な日本刀の一つです。
かつて筆者が東京国立博物館に訪れた際、たまたま展示されていたこの刀に目を奪われました。先が細く華麗な刀身ながら、豪胆さも感じさせます。他の国宝クラスの日本刀と比べても、重心が鍔側に近い特異なバランスのようです。小学校の頃に剣道を学んでいた拙い知識でも、切先がヒュカっと高速で動きそうです。撮影が許可されていたので、暗い博物館の中で何度もシャッターを切りました。