降松神社をめぐる『下松北辰ライン』の謎(後編)

前編に続く『下松北辰ラインの謎』についてです。

山の主に出会う

茶臼山での北極星撮影が不調に終わり、やむなく下山せざるをえなかったわけですが、帰路でとんでもないことが起きました。世界最先端の新幹線を製造する日立笠戸工場のすぐそばで、まさかあんなものに出会うとは!山を舐めたらいけませんね。

瓢箪池の表示

瓢箪池(ひょうたんいけ)を過ぎたころ、全く無音だった山道で、遠くからガサッガサッと枯れ葉を踏む音が・・・段々近づいてきます。音で結構な体重がある存在だということがわかります。時間は深夜1:00ごろ。人が歩く時間ではありません。

ガサッガサ、ズザザ、だんだん近づいてきます。映画「エイリアン2」で追いつめられる絶体絶命のあの感じ。最後はザザザザザー!と走りながら山道に現れたのは、なんと大きなイノシシでした。山側の茂みから飛び出し海側へ、筆者の目の前を横切って、ザーーーーと茂みを走り、また山道に戻ってきました。山の主か!体長は1mちょい、背中が盛り上がりタテガミがあります。生まれて初めて生きたイノシシを見て、しかも全く予想してなかったので、極度の緊張が走りました。

茶臼山でイノシシ

山の主イメージ画像


この時は全くイノシシに関する知識がないものですから、こちらが逃げると追われると思い、地面を思い切り蹴り、ドスドスドスドスと追うことにしました。真っ暗でライトの光だけなので、相手からこちらは見えないはず。案の定、イノシシは一目散に逃げていきます。

後から得た知識では、イノシシに出会ったときには、静かにやり過ごすのがいいそうです。追いつめたり、子連れの場合は、向かってくることがあり、大けがをすることもあるそうです。牙があるので太ももを噛まれ動脈をやられると死に至ることも・・・。たまたま相手が逃げてくれましたが、危険な行動でした。

イノシシがいなくなって頭をよぎったのは、小学生のころに読んだ「日本武尊が草薙の剣を持たずに山に出かけ、白いイノシシ(山の神)に致命傷を負わされる」という話。筆者も武器になるようなものは何もありません。ヤバいです。早歩きに拍車がかかりました。しかしその後も、後方でズザザザと時折音がします。くっ、追われているのか!・・・と振り返ろうとしたその時、前方からザザザザと現れたのは!・・・・・子供のイノシシでした。ホッ。ウリボウではないけれど50cmぐらいのイノシシでした。さっきの家族かな?イノシシ濃いな。

そこからさらに10分後ぐらい。突然、背後のやぶからザーーー走り出たのは!体調50cmぐらいのイタチ。最初は猫かと思いましたが、胴が長く色が赤っぽかった。それにしても、自然が豊かで、ハイカーを楽しませてくれる山道です。

茶臼山周辺の妙見信仰の痕跡

標識1

標識2

標識3

今回歩いたのは比較的歩きやすいとされる「東豊井ルート」ですが、茶臼山に行くにはいくつかルートがあります。山道のところどころに標識があり、参考になりました。で、ちょっと気になったのは「恋ヶ浜降松神社」と「妙見稲荷神社」という文字です。

降松神社の小さい社が市内に何ヶ所かあるのは知っていましたが、茶臼山に通じる道にそれがあるとは!さらに光市に妙見稲荷神社があるとは全く知りませんでした。そういえば、東豊井ルートの起点そばには「妙法禅寺」という寺もあったはず。文字通り“妙”な一致です。降松神社の古い名前「妙見社」ゆかりの施設かどうかわかりませんが、これらは偶然なのでしょうか!?

下松北辰ライン

国土地理院地図で磁北線7°を表示

後日、関係施設かと思われる場所に行ってみました。下の写真は妙法禅寺です。

妙法禅寺1

山門がいかにも茶臼山の入り口という風に見えますね。

妙法禅寺2

山門の解説を見る限り、妙見社とのかかわりはなさそうです。

妙法禅寺3

小じんまりした妙法禅寺の本堂です。毛利の家紋「一文字三つ星」が見えます。本堂の裏手に東豊井ルートに続く坂があります。

恋ヶ浜降松神社

こちらは、恋ヶ浜降松神社です。茶臼山に入る道の横に建っています。

恋ヶ浜降松神社

登山口の標識のアップ。一つ上の写真の狛犬の右後ろにあるものです。

恋ヶ浜降松神社

恋ヶ浜降松神社の鳥居です。懸社(県の神社)の文字が見えます。

恋ヶ浜降松神社

恋ヶ浜降松神社の本殿です。

妙見稲荷神社

これは光市の妙見稲荷神社です。茶臼山の南東からのルートの入り口近くにあります。

妙見稲荷神社2

やはり妙見信仰ゆかりの神社のようです。妙見信仰と稲荷信仰が習合した社のようです。

妙見稲荷神社

小じんまりした妙見稲荷神社の本殿です。


各社は茶臼山=妙見の守護施設なのかも

今回、茶臼山の深夜登山で様々なことがわかりました。降松神社(妙見社)の立地とその意図。山を囲むようにして配置された守護用であろう施設の存在。帰りに見送りに来た山の主など(笑)。理解が深まると同時に、『下松北辰ライン』に別のラインやポイントはないのかなど、新たな謎も生まれてきました。北斗七星の配置が地上にないか探しましたが、今のところなさそうです。今後、新たな謎の究明と、このたびは断念した山頂からの北極星写真を撮影をしていきたいと思います。